「腎臓病臨床経済協議会」
趣意書(ご協力依顆)
わが国の慢性腎臓病(CKD)の患者数は1,330万人以上(2010年)と推定されており、人口あたりの患者数でも世界上位の密度となっています。また、我が国における腎不全の生命予後や患者のQOLなどは世界で最良ではあるものの、まだ改善の余地があり、さらなる技術革新が期待されています。一方、病態の進行に伴い、各種血液浄化療法、腎移植、およぴ関連する薬物投与、管理指導など多様な療法介入が必要になり、多くの医療資源が消費されています。
腎不全の医療システムを支える経済面に目を向けると、ここ10年間の腎不全の医療費は、約40%強増加しており、国民総生産GDPの伸び率が10%前後であるなか、さらには国民総医療費が23%程度であるのに比ベて、その増加率は顕著です。医療保険制度は一般に、財源均衝作用などの影響を受けると言われており、症例数が多い血液浄化療法を中心に近年は、当該領域の診療報酬評価は抑制されてきたと考えられます。
以上のように、腎不全を取り巻く経済の状況が厳しさを増す中、費用対効果に優れた診療介入を臨床現場に促し、社会経済的な価値の高い医療技術を診療報酬で積極的に評価をしていくベきではないかという意見も出てきています。また、腎不全の医療システムを持続発展させるには、限られた医療資源を有効活用すると同時にその価値に見合った適正な医療財源の確保が必要であり、社会的な観点による全体最適化を志向した議論が不可欠です。
しかし、当該領域では従来、社会経済的な価値評価の研究が十分に行われておらず、そのようなエビデンスに基づいた大局的な議論の醸成が不足していた点は否めません。そこで、本領域における医療技術の適切な普及や、それらを運用するための環境整備の議論(各種基準やプロトコール)に資することを目的に、腎不全治療の臨床経済的な価値を定量的に明らかにしつつ、その結果を活用して医療システムの持続的運営を促すことを本グループ(協議会)において指向することとしました。
社会構造の変革が進む中、本協議会における検討や研究の成果の積み重ねにより、我が国の腎不全 治療のさらなる向上、発展、ひいては国民福祉ヘの寄与、貢献を大いに期持しています。
つきましては、諸般の事情が厳しい時期ではございますが、以上の趣旨にご賛同賜り、是非ともご協力いただければ幸甚に存じます。
平成29年4月吉日
腎臓病臨床経済協議会
理事長 川西秀樹